単離精製を行わずにNMRで混合試料の構造解析ができます
DOSY法によるスペクトル分離技術の説明
NMRは通常、混合試料中の各成分の構造解析を行う場合、各成分を単離精製した後、各々測定します。DOSY法は、各成分の拡散速度の違いを利用することで各成分ごとにスペクトルを分離することができるため、単離精製することなく混合試料中の各成分の構造解析を行うことができます。(Diffusion Ordered NMR SpectroscopY:DOSY法)。
図1 2度の磁場勾配パルス照射前後における分子の挙動および磁場勾配のイメージ |
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磁場勾配パルスを2度照射する際の分子移動距離をΔzとした場合、位相変調(核スピン周波数に基づく位相の変調)の大きさは(1)式で表されます。位相変調すなわち信号強度の減衰の大きさはΔzに比例し成分ごとに異なるため(Δz1<Δz2)、この差を利用することでスペクトルを分離します。
DOSY法の特徴
- 分子量による物理的な分離が困難な試料の測定に有効
- 前処理により構造変化が起きる試料(例:タンパク質など生化学分野の試料など)の測定に有効
- 複数の成分の混合したスペクトルを分離できることから、各成分の構造解析が容易
- 混合物中の各成分の分子の運動性に関する知見が得られる
DOSY法のデータ例
本例では、実験的に低分子としてエタノールおよび高分子としてポリビニルピロリドンを混合した溶液をDOSY法でスペクトル分離したデータを紹介します。
図2 一次元1H-NMRスペクトル(上段)およびDOSYスペクトル(下段) |
エタノールとポリビニルピロリドン2成分あわせて検出されます。 |
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低分子で移動しやすい(拡散係数が大きい)エタノールと高分子で移動しにくい(拡散係数が小さい)ポリビニルピロリドンのスペクトルが分離されて検出されます。 |
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DOSYスペクトル中、検出各ピークの化学シフト値から、エタノールおよびピロリドンを個別に構造解析を行うことが可能です。
図1 2度の磁場勾配パルス照射前後における
図2 一次元1H-NMRスペクトル(