着目の成膜パラメータ(温度、圧力)にて多分子競合吸着性の評価が可能です
概要
領域選択的原子層堆積(AS-ALD)において、小分子阻害剤(SMI)は基板表面でのプリカーサ吸着の表面選択性を制御します。SMIは、基板の非成長表面への不要な堆積を防止し、成膜プロセス中の薄膜形成に重要な役割を果たします。本事例ではGCMC(グランドカノニカルモンテカルロ)法を用いて、Cu(111)表面におけるSMI(アニリン、ピリジン)とTMA(トリメチルアルミニウム)の単分子および2分子種の競合吸着量の予測をしました。本解析は、分子の立体効果まで含めた吸着特性の評価に有効です。
データ
小分子阻害剤(SMI:small molecule inhibitors)


SMIは非成長表面と相互作用することで、堆積反応を抑制し、成膜の領域選択性を実現するために有効です。
計算モデル

TMA

アニリン

ピリジン
アニリン、ピリジン(SMI)とTMA(プリカーサ)の、常温(297.15 K)、常圧(1 bar)時のCu(111)基板への吸着特性を解析しました。
計算結果
アニリン

ピリジン

分子動力学計算から得られた典型的な吸着構造アニリンは基板に対しほぼ平行に吸着し、ピリジンは斜めに吸着する様子が見られました。
Cu(111)への分子の吸着エネルギー(eV)
| アニリン | ピリジン | TMA |
| -1.62 | -1.13 | -1.28 |
吸着エネルギーより、ピリジンよりアニリンの方が、Cu(111)との相互作用が強いことが分かります。
①単分子の平衡吸着量(nmol/cm2)
| アニリン | 0.098 |
| ピリジン | 0.148 |
| TMA | 0.101 |
単分子の平衡吸着量は、必ずしも吸着エネルギーの大小関係と相関せず、分子の体積や吸着構造の影響を受けることが示唆されます。
②SMI、TMAの競合時の平衡吸着量(nmol/cm2)
| SMI吸着量 | TMA吸着量 | |
| アニリン | 0.063 | 0.051 |
| ピリジン | 0.088 | 0.062 |
SMI、TMAの競合吸着において、アニリンはピリジンよりも優れた阻害効果を示すと予測されます。アニリン、ピリジン、TMA間の相互作用や、温度、圧力などの成膜パラメータの影響を定量的に評価することが可能です。